熱く甘く溶かして

「本当はあの制服好きだったんだけどなぁ……あんなことがあったから、気持ち悪くなって……」
「……制服なんて、とってある奴の方が少ないだろ」
「でも一花は夫婦の制服を残してあるらしいよ。なんでも一花が高校生の時に、大学生の先輩に制服を着てデートしてもらったんだって。そんな思い出があるなんてちょっと羨ましい」

 寂しそうに智絵里は遠くを見る。智絵里から寂しさを拭ってやりたい。どうしたらいいのだろう……。

「……そういえば俺の制服、袖口と前のボタンを智絵里が縫い付けてくれたの、覚えてる?」

 恭介が言うが、智絵里は思い出せずに首を横に振る。

「元々付いていたやつより、智絵里が縫い付けた方がキレイなの。お前って手芸全般得意だっただろ? だから俺の制服は智絵里が付けたボタンがそのまま残ってる」

 まさかそんなところに自分の痕跡が残っているとは思わなかった智絵里は、小さく微笑んだ。

「卒業式で誰かにあげなかったの?」
「だって誰にも言われなかったし。それで良かったって思ってるよ」

 私の制服の良い思い出は消えてしまったけど、恭介の中で私の思い出が繋がっていたことが嬉しかった。
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