熱く甘く溶かして

「日比野さんは、彼氏の元カノ事情とかって気になりますか?」
「……まぁ気になるけど、絶対に聞かないね。聞いてもいいことないもん」
「そ、そうなんですか⁈」
「自分以外の女の子とどこに行った、あんなことしたとか、知ったところで比べちゃったりしたら嫌じゃない? しかも男って、大体の奴が元カノを悪くは言わないのよ。イライラするのはこっちだし、知らぬが仏だと私は思ってる」
「なるほど……深い……」
「なぁに? 彼にヤキモチ妬いてるの?」
「えっ……! あ、あの……まぁ……そうなんですけど……」

 今までに見たことのない智絵里の姿に、日比野はつい顔の筋肉が緩んでしまう。

 男の人が苦手だと言って、いつも硬い表情だった。それがあの彼と再会してこんなにも緩むものなのねぇ。

「これは松尾さん情報なんだけど、やっぱり彼、結構モテてたみたいだよ。合コンにあいつは連れて行きたくないけど、人数合わせで仕方なく誘うと、大体の女性が彼狙いになるんだって。でも付き合ってもどこか冷めてて、長くは続かなくて。でね、付き合うタイプの女性がみんな一緒で、黒髪ロングの背が高めのキレイ系女子。わかる? 彼はずっと智絵里ちゃんを引きずってたのよ」
「……たまたまじゃないですか? 私みたいな人っていっぱいいるし」
「でも智絵里ちゃんは一人でしょ? 見た目と中身が合致する人間は、世の中に一人しかいないんだよ。それに松尾さん、あんなに取り乱した篠田は見たことがないって言ってたよ。確かに前の彼女は気になるかもしれないけど、彼は智絵里ちゃんを探してたんじゃないかな。だからもっと自信を持っていいと思うよ!」

 日比野に言われると、不思議とそうかもしれないと思えてくる。

「そうですよね。見たこともない過去の女に嫉妬して、クヨクヨしても仕方ない!」
「そうそう。頑張れ!」

 元カノを気にするより、今は私を好きだと言ってくれる恭介を信じよう。きっとそれが私の自信にもなるはずだから。
< 40 / 111 >

この作品をシェア

pagetop