友達、時々 他人
12. 彼のやさしさ
あ、龍也に似合いそう……。
そう思ったことに気づかない振りをした。
私はネイビーのマフラーから視線を逸らした。目に入ったダークグレーのマフラーは、勇伸さんに似合いそうだ。
マフラーじゃ、定番過ぎかな。
次に目に入ったのは、ネクタイ。
勇伸さんはいつもグレーか黒のスーツを着ている。濃淡の違いはあるが、覚えているのは、みんなそう。
ネクタイも同系色。それに、ほぼ無地。
グレーはグレーでも、ちょっとデザインのあるものとか……。
そう思って、ダークグレーに白の大きなクロスラインの入ったネクタイを手に取った。が、すぐに置いた。
結んだ状態で飾られているネイビーのネクタイをじっと見る。
結び目は無地で、剣はストライプ。同じデザインでグレーやブラウンもある。
龍也が好きそうだな。
ハッとして、目を逸らす。
すぐ隣には、ネクタイピンとカフスボタンのセットが並んでいる。
クリスマスの一週間前という時期に相応しく、プレゼントの定番商品が綺麗にディスプレイされている。
因みに、マフラーの奥には手袋。
私は人差し指の第二関節を曲げ、唇に押し付けた。
どうしよう……。
先週から、こうして毎日悩んでいる。
仕事帰りに色々見て歩いてはいるが、コレというものに出会えない。
いや、出会ってはいるのだろう。
勇伸さんに似合いそうなマフラーも手袋も、ネクタイもネクタイピンもあった。なのに、すぐに気が逸れてしまって、購入に至らない。
勇伸さんのプレゼントを探してるのに――!
気づけば龍也をモデルに想像している。
早く決めたいのに――!
ホテルでの気まずい一件から、勇伸さんは仕事が忙しいと大学にこもっているらしい。メッセージの返事はくるし、一日おきに電話もくる。五分ほどの、他愛のない会話だが。
とにかく、次に会えるのはクリスマスの予定。
仕事が忙しくてしばらく会えそうにないと電話で言われた時、クリスマスは一緒に居たいとも言われた。
勇伸さん自身がクリスマスに特別な意味を感じているようには思えないが、恋人らしくと考えてくれたのだと思う。
私は、楽しみにしている、と伝えた。
伝えた以上、プレゼントは必須。
というわけで、こうしてプレゼント選びに奔走しているというわけだ。
実のところ、龍也とは毎年プレゼントを交換している。
いつも、クリスマスは互いにフリーで、一緒に居たから。
違うか……。
龍也はずっとフリーで、私も――。