友達、時々 他人
 こんな調子で、龍也は毎週末のように私のアパートに泊まっていく。平日も、必ず一日は来る。

 龍也に彼女がいない時は。

 私に彼氏がいない時は。

 二か月前、私が彼氏と付き合いだしてから別れるまでの半年間は、会うどころかメッセージの交換すらしていなかった。

 それが、私たちのルール。

 どちらかに恋人がいる間は、他人。

 私と龍也は同じ大学のサークル仲間だった。その名も『OLC』。O大学ルーズサークル。特に決まった何かをするでもなく、とにかくまったり何かを楽しもう、みたいなサークルと呼ぶにはおこがましい集まり。

 私は同じ学科で友達になったさなえと見学に行き、サークルの新田大和(にったやまと)先輩に一目惚れをしたさなえに頼み込まれて、サークルに入った。

 二か月ほどでさなえは大和先輩と付き合い始め、五年前に結婚した。

 さなえと大和先輩の結婚式で、疎遠になっていたサークル仲間が顔を合わせ、中でも気の合った七人で時々飲むようになった。

 龍也とは年も同じで、性別を感じさせない仲間だった。

 再会してからも、それは変わらなかった。

 龍也との関係が変わったのは、四年前。再会して一年が過ぎた頃。

 龍也が友達でセフレになった。

 互いに恋人がいない時だけ、友達でセフレ。

 自暴自棄になっていた私は、拒まなかった。

 龍也とのセックスなんて、可笑しくて笑っちゃうんじゃないかと思っていたのに、意外にも盛り上がった。友達としてじゃない、男と女の顔に興奮したし、相性が良かった。

 龍也は大雑把な性格で、サークル内ではムードメーカーだった。

 なのに、料理とセックスは几帳面で、とにかく丁寧で、優しい。

『自分勝手に突っ込まれて、ガンガン突かれるのかと思った』と言ったら、本気でしょげていた。

 小学生の頃から水泳をやっていたという龍也は、スポーツマンらしいがっちりした肩や胸板がスーツやTシャツに隠せておらず、逞しく大きく見える。身長が百八十センチと聞いて、驚いた記憶がある。

 その龍也が、小動物にでも触れるかのように優しく、ゆっくりと全身に触れ、私の様子を窺いながら腰を振るのだ。

 ギャップを感じるのも当然だろう。

「あきら……?」

 耳元で名前を囁かれ、私はハッとした。

「意識、飛んでたろ」

 バカ丁寧に時間をかけて全身を舐めつくされれば、意識も飛ぶ。

「大丈夫か?」

 大きな手で頭を撫でられ、私は再び目を閉じそうになる。

「寝るなよ?」

「じゃあ、早くシて」

 私で感じている龍也の顔が、好き。

 こうしている間だけは、嫌なことをすべて忘れられるから。

 友達だとかセフレだとか、そんなことは関係ない。

 互いの体温を肌で感じている瞬間(いま)だけは、世界のすべては互いだけ。



 このまま世界が滅べばいいのに……。



 そんなことを願いながら、私は意識を手離した。
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