友達、時々 他人
11. 宣戦布告
俺があきらが何より嫌がっていた、『俺とあきらの関係をOLCのみんなに明かす』ことを決めたのは、堀藤さんの言葉がきっかけだった。
『格好悪くてもみっともなくても、本音をさらけ出してもらえたら、良くも悪くも気持ちは揺れますよ』
割とみっともないところは見せていたと思う。
『顔も見たくないほど嫌われる覚悟で押してみては? それでもダメで嫌われたら、諦めもつくかもしれませんよ?』
嫌われる覚悟は……。
なかったと思う。
だから、別れを告げられた時も、聞き訳の良い振りをした。
ずっと『恋人』になりたかったのに『セフレ』に甘んじてきたのは、あきらに嫌われて関係を解消されたくなかったから。それは、惚れた弱みであり、いつか俺を受け入れてもらえるのではという期待があったから。
ハッキリと関係の解消を告げられた今、何を恐れる?
嫌われる覚悟、をしたら、気持ちが楽になった。
まずは、俺の諦めない決意を伝えるところから。
けれど、早々にさなえの妊娠や陸さんの離婚と渡英の話で盛り上がり、俺の告白なんて出来る流れではなく。どうしたものかと考えながら、いつもより早いみんなのペースに乗っかって飲んでいたら、酔いが回り始めた。
あきらは俺を見ようとしないし、凹むばかり。
昨夜、眠れなかったせいもある。
俺の告白に、みんながどう反応するか、あきらがどう思うかを考えていたら、眠れなかった。
そのまま、寝不足だと話したら、女がデキたのかと聞かれ、事実を言った。
『デキてません』
その時の、あきらのホッとした表情を見逃さなかった。
今だ、と思った。
『マジで好きな女、いるんで』
今度は驚いた表情。
『素直になって、龍也を受け入れてくれるといいね。龍也なら、絶対大事にしてくれるんだから』
麻衣さんの言葉に、泣きそうになった。
ホント、それ。
絶対大事にするのに。
俺の気持ちなど露知らず、あきらは呑気にタコのカルパッチョを食べている。美味いらしい。
やっぱり、ハッキリ言わなければ。
そう思った時、千尋が言った。
『地球滅亡の瞬間、誰と一緒に居たい?』
『あきら!』
考えるまでもない。とはいえ、ほろ酔い加減でよく反応できたなと言うくらいの早さで答えていた。
『俺、あきらが好きなんです』
胸の痞えが下りて、スッキリした。
ついでに頭も、スッキリした。
『あきら、早く諦めて結婚して』
手を握り、それをみんなに見せつけるように高く上げる。
『俺は絶対諦めないから、あきらが諦めろ』
もう、遠慮はしない。
言うことを言ったら、後は押して押して押しまくるだけ。
大和さんの言ったように、毎日好きだと言う。陸さんの言ったように、ドロッドロに甘やかす。
恋人がいたって構うもんか――!
酔い潰れた千尋を迎えに来ると言う恋人を待っている間に、鶴本くんが麻衣さんを迎えに来た。
連絡して五分程度で来たのを考えると、近くで待っていたのだろう。
俺の鶴本くんへの印象はかなり良いのだが、陸さんの言動が気にかかっていた。