秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「わざわざ説明する必要はないかもしれませんが……」

 そう前置きをすると、父はまだなにかあるのかと言いたげに片眉を上げた。

「佐々木梨香には、京都での私へのストーカー行為で接近禁止命令が出ているとご存じですよね?」

「あ、ああ。ずいぶん大げさな」

 この期に及んでまだそんなふうに言うのかと、怒りが込み上げてくる。

「当然ですよ。赤の他人にあんなふうに付きまとわれて、私は命の危機すら感じているので。常に警戒し続け、普通の生活を送るのも難しくなりかねないですしね」

 大げさでもないのだろう。
 私たちと暮らしはじめたときも、マンションのセキュリティーを重視したと言っていたし、自分が出かけるときには戸締りなどちゃんとするようにと何度も行ってきた。
 私が知らなかっただけで、大雅は常に緊張を強いられていたのかもしれない。

「〝命令〟の意味を理解されていると、信じていますよ」

 大雅に促されて、畳みかけるように私も告げる。

「育てていただいた覚えはありませんが、それでも血のつながりは否定できませんので、これだけは伝えておきます。今までお世話になりました」

 さっと立ち上がってそろって頭を下げると、これ以上長居はしたくなくて足早に事務所を後にした。
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