秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
 しとしとと雨の降る今日は、外へ遊びに連れ出してあげられないでいる。代わりに、テレビ番組に合わせて一緒に体操をしたり、床を転げまわったりしながらいつも以上に体を動かして遊んでいた。

 すっかり疲れた陽太は、なんとかお昼ご飯を食べると電池が切れたようにぱたりと眠りに落ちた。その唐突な様は、いつ見てもかわいらしい。

 今は、その近くでパソコンに向かっている。
 この子にとってタイプ音は子守歌代わりかもしれないと、くすりと笑いをこぼした。

「んー」

 長い時間同じ姿勢でいたせいで固まってしまった体を、思いっきりを伸ばす。
 一時間以上寝ているというのに、陽太が目を覚ます気配はまったくない。

 一息入れようと立ち上がると、タイミングを同じくして玄関のチャイムが鳴り響いた。ハッとして陽太に目を向けたが、よほど深く寝入っているのかピクリとも動かない。

 加奈子さんだろうか。この時間なら、お茶のお誘いかもしれないといそいそと出迎えにいく。
 それほど新しい物件ではないからインターフォンなどはなく、「はあい」と直接声をかける。

 不用心にも、訪問者を隣人だと決めつけてドアスコープを覗かなかったのは私の落ち度だ。

 扉を開けて視界に飛び込んできたのは、明らかに女性のものではないグレーのスーツだった。
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