秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
「千香の方は……念のため聞くけど、気を悪くしないでね」

 申し訳なさそうな表情の大雅に、言わんとするところを察してしまう。

「ご両親への報告は、どうしたい?」

 あくまで私の希望を聞いてくれる彼を、まっすぐ見据える。
 答えなんて、家を飛び出したあのときから決まっている。

「あの人たちには、もう関わりたくない。知らせる必要も感じない。もし教えてしまえば、どんな行動をとってくるのか……それが、怖い」

 実家を梨香が継ぐのなら、無理やりなにかをされはしないだろうと信じたい。でも、母と姉の思い付きの意見に流されてしまう父を見ていると、それも自信がない。

「うん、そう言うと思ったよ」

「保証人の欄は……加奈子さんにお願いしたい」

 それも想定済みだったのか、大雅は「そうだね」と笑みを浮かべた。

「加奈子さんは、これまで俺の代わりに千香と陽太を見守ってくれた人だ。俺からも、お願いしたい」

 それについては明日話に行くとして、さらに今後の話を詰める。

「とりあえず、必要なものは俺の車に乗せて運んで、あとは折を見て徐々に運んでいくって感じでいいんじゃないかな」

 完全な引っ越しは大雅の次の休みにすると、当面の見通しが立ったところでそろそろ寝ようと立ち上がる。

「千香、おやすみ」

 ここに来た日から毎晩しているように、大雅がふわりと私を抱きしめた。互いの体温を存分に確かめ合った後に、そっと口づけられる。

 手を引かれながら寝室へ向かい、陽太を挟んで体を横たえる。
 こんなやりとりがこれからも毎晩交わされるのだと、甘い幸福感に満たされながら陽太の隣で瞼を閉じた。
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