秘密のベビーのはずが、溺甘パパになった御曹司に一途愛で包まれています
 加奈子さんに陽太を預けると、部屋に戻って片付けをはじめる。物は少ない方だと思っていたが、陽太が生まれてからこまごまとしたものがずいぶん増えていた。その一つひとつに思い出があり、つい手を止めがちになる。

 もう初冬だというのに、車と部屋を何往復もしているうちにうっすらと汗を浮かんでくる。
 大雅と協力してなんとか荷物を運び終えると、加奈子さんの部屋へ陽太を迎えに行った。

「たまにでいいから、陽太君の写真を送ってね」

 最後は加奈子さんのそんな言葉に見送られて、すっかり住み慣れたアパートを後にした。
 寂しい気もするが、これからはじまる新しい生活に思いを馳せながら車に乗り込む。

「一刻も早く、千香を俺のものにしたい」

 車を発進させた大雅が、真剣な顔をして言う。その端正な横顔をじっと見つめた。

「先に、婚姻届を出しに行きたい。不安なんだ」

 もしかすると、再会して互いの気持ちを確認してもなお、私がすぐに答えを出さなかったせいで彼にそう思わせているのかもしれない。

 ここまできて逃げ出すつもりはない。大雅を安心させたくて、彼のしたいように任せることにした。

 目的地に向かう最中、大雅が陽太の扱いにもついても説明してくれた。大雅の実子とするには認知届の手続きが必要となるが、そのあたりは専門家である彼に任せる方が間違いなさそうだ。
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