あなたの落とした願いごと
拓海君は週に何度も遊びに来てくれているのに、それでも誰だか分からなくなってしまうなんて。


「疲れてるのかな、」


彼に“誰ですか?”と聞かなかっただけ、良くやったと思いたい。


でも、明らかに私は変な態度を取ってしまったし、拓海君に怪しまれた事は確実。



私は結局、誰の顔も分からないまま生きていくしかないのかな。



でもせめて、大切な人だけは覚えていたい。


例え声や容姿が変わったとしても、彼らの事だけは忘れたくない。


脳裏によぎるのは、家族や幼馴染みの姿と、

想いを寄せる、滝口君の姿。


想像上の彼らはマネキンみたいに首から上がないけれど、


「覚えてたいな、…」


不意に切なくなって、涙が零れ落ちそうになる。


慌てて涙を拭った私は、ゆっくりとお風呂のお湯に頭まで浸かった。



お湯は温かいのに、自分の身体は冷たくなっている様に感じた。


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