あなたの落とした願いごと

特別な名前

あれ程美しく咲き誇っていた桜もほとんど散ってしまった、4月下旬。



「ねえねえ、帰りのホームルームで話される内容って、やっぱり社会科見学の事かなー?」


「そうじゃない?南山大江戸町でしょ?」


「そうそう」


5時間目が始まる直前の休み時間、私は前の席に座る親友とそんな事を話していた。


新しいクラスでの生活もかなり慣れてきて、私はいつもエナと行動を共にしている。


でも、そこに彼女の事が大好きな空良君が滝口君を引きずって乱入してくるから、4人で一緒に過ごす事も多いんだ。


「ねえ、班決めってどうなってると思う?私達同じ班になれるかな?」


高頻度で髪の色を変えるのが好きなエナは、いつの間にかピンク色に染まった可愛らしい髪を揺らして隣の席を向いた。


「んー。例え違かったら、先生に言って同じ班にしてもらうまででしょ!その時は沙羅ちゃんと神葉も一緒ね!」


スマホで他の友達とゲームをしていたらしい彼はそう答え、ね!、と、私と滝口君の方へぐるりと顔を回した。


その目線が私と彼のどちらに向いているのかはっきりしなかったものの、そうだね、と頷いておいた。



このクラスで1ヶ月近く生活し、分かった事が幾つかある。


まず、このクラスのトップに君臨している男子はムードメーカーの空良君、そして全てにおいて完璧と称される滝口君。
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