S系御曹司は政略妻に絶え間なく愛を刻みたい~お見合い夫婦が極甘初夜を迎えるまで~
21章:彼女と俺のこと①(side 要)

 いろはが最初に俺と出会ったと思っている日の半年前。
 俺はいろはと会っている。いや、正確には見かけている。

 慌てて病院に駆け付けた時、ちょうど同時に病院から出てきた高校生くらいの女の子がいた。
 真っ白なのに血と泥で汚れたワンピースにギョッとしたのもあったけど、それ以上に、そのまっすぐ伸びた背中に目線が奪われ、急いでいるというのに彼女が大きな車に乗り込むところをつい見てしまっていた。

「おじいさま、申し訳ありません」
「いつもいつもお前と言うやつは……」
「だってこのままじゃ、菊上先生が驚かれるでしょう」
「当たり前だ」

 彼女にそう言った彼女の祖父に当たる人が、七瀬モーターズの七瀬洋祐会長だったものだから余計だ。

 彼女が乗り込んだ車が走り去るのを見送ると、俺はふと我に返って踵を返してから慌てて走っていた。

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