The holiday romance

小樽へ

シンはあの旅のあと、ユキと別れて名古屋の実家に帰った。

会社を辞めてしばらくは名古屋の知人の飲食店が人手不足で困っているというのでそこを手伝っていた。

「お前さ、このままここで働いたら?

シンさえ良かったらこの店任せてもいいよ。」

今、2店舗あるだろ?
俺があっちの店で働いたらこっちが手薄になってさ…色々大変なんだよ。

任せるなら信用出来るヤツに任せたいしさ。」

悪い話ではなかったが、シンにはどうしても行きたい場所があった。

ある程度お金を貯めたら再び実家を出て
北海道に引っ越すつもりでいた。

「俺ね、北海道で暮らそうと思う。」

「な、なんでまた北海道?」

「会社辞めてすぐ…旅行したんだよ。

そこでさ、すごい運命の出逢いがあって…

俺にとってはすごいラッキーな土地って気がしてさ…。
それにあそこに居たらその人にまた逢える気がするんだよ。」

「まさか…女?」

シンはそれには答えなかった。

あれから何度もユキを思った。

ユキに逢いたくてあの肌に触れたくて堪らなかった。

ユキと別れて苦しくてあの場所を離れたのに
シンは帰ってきた後、何度も北海道の夢を見て
またあの場所に戻りたいと思うようになった。

「だから、ごめん。
店長は別の人見つけてよ。」

「そうか。
でも向こうで働く場所決まってるのか?」

シンは何も決めてなかった。

仕事も住む場所も現地で探してみようと思った。

ユキに逢えそうな場所で働いていればいつかユキが逢いにきてくれる気がした。

こうしてシンは名古屋に戻って3ヶ月後に
北海道に旅立って行った。

まずは住む場所を決めた。

シンが最初に向かったのは札幌だったが
部屋を借りたのは小樽だった。

あの時、小樽でユキと遊んだ日がシンには最高に幸せだったからだ。

とりあえずはアルバイトをしながら就職活動をした。

しかしやはりなかなか決まらずに困っていると一本の電話が入った。

前の会社からで部長の不正について調査しているとのことだった。

そして親会社から人が派遣されてシンのところにやって来た。

子会社の小樽支店に欠員が出たのでそこで働かないかと打診された。

シンにとっては願ったり叶ったりだ。

しばらくして前の会社の上司がシンに逢いに来た。

「すまなかった。
結局部長は不正がバレて会社を解雇されたんだ。
君は勇気を出して僕に相談してくれたのに…。
僕はどうしていいかわからず、部長本人に話してしまった。
あの噂を流したのも僕なんだ。

部長に言われて…勇気が出なくて君を貶めてしまった。」

上司は頭を深々と下げた。

「わかりましたから。俺はもう大丈夫ですから。」

「君は五明グループの誰かと知り合いなの?」

「え?五明グループ?いや、全然。
コネなしでちゃんと試験受けて入社しましたよ。」

「そうなんだ。
でも何でなのかな?
五明の偉い人が君の退職の原因をわざわざ調べて
君がここに就職できたのもその人からの指示だそうだよ。

もしかして知らないの?

前の会社も今、君が勤めてる会社も五明グループの系列だって。」

五明なんて名前は社名についてなかったから考えたこともなかった。

シンは五明グループを検索してみた。

そして五明の社長も調べてみた。

そこで思わぬ画像を発見した。

五明グループの社長の画像の中にユキが居た。

五明グループの社長の息子の結婚の写真だった。

シンはその記事を読んでユキがとんでもなく大きな投資会社の娘であることと
五明グループの常務の妻であることを知った。









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