不妊の未来
茉由「失礼します」

大和と医療秘書が同時に茉由の方を向いた。

医療秘書「鷲尾さん?どうかしましたか?」

茉由「これ、結果です!早くお伝えしたくて」

診察時間になれば検査値はパソコンで確認できる。
でも早く伝えたかった茉由。
そして早く伝えに来たことで大和には結果がおおよそ分かった。
検査値の書かれた紙を茉由の手から受け取り、ひとつ小さく頷いた。

でも表情は固い。

大和「まだ、これからです」

hcgが基準値を超えても、その後胎嚢、胎芽、それから心拍の確認ができないといけない。

茉由にもそのくらいのことは分かっている。
それでも喜ばずにはいられない。

だからせめてこれくらい、と茉由は手のひらを大和に向けて見せる。

医療秘書「鷲尾さん?」

予想外の行動だったのか、医療秘書が苦笑いを浮かべた。

でも茉由はそのままの姿勢で大和を待つ。

大和「あなたという人は」

大和は眉根を寄せて笑い、茉由の手のひらに自身の手のひらを当てた。

茉由は医療秘書にも手を出す。
医療秘書も困惑しながら手を合わせてくれた。

茉由「では、失礼します」

外来診察の邪魔をしてはいけない。

早々に退室した茉由。

医療秘書「患者の妊娠をあれほどまでに喜ぶなんて。鷲尾さんはよほどこの仕事が好きなんですね」

大和「そうですね」

大和は茉由のことを思いながら口元に笑みを浮かべた。
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