不妊の未来
益田「ハハ。みんなその反応するな。まぁ、不妊治療の仕事をして着床率を上げるための研究までしているのになんで?って思うよね。でも僕ら夫婦はお互いに医者で仕事が好きで今でも家庭を犠牲にしてしまうことがあるんです。そうなると子供が出来ても子供に寂しい想いをさせてしまう。それなら初めから作らないと決めた方が気持ちも周りへの対応もラクなんですよ」

ニコッと微笑む益田からは後ろ向きな感情は見て取れない。

益田の選択もひとつの家庭の形だと茉由は思った。

杏菜「大和先生はどうして結婚しないんですか?」

杏菜が話の矛先を大和に向けた。

箸を持つ茉由の手が止まる。

チラッと横目で大和を見ると視線が交差した。

ドキッとする茉由。

でもすぐに大和の目線は杏菜の方に向いたので、茉由は箸を置き、お猪口に口をつけ、大和の言葉を待つ。

大和「僕の話なんてつまらないですから。恋愛に関しては益田の方が面白い話し、たくさん持ってるから聞くといいですよ」

大和は益田の方に話題を変えた。

そうなると杏菜も益田に聞かざるを得ない。

そして益田の恋愛遍歴を聞きながら食事を進めること2時間。

机にうつ伏して寝てしまった二人を前に、日本酒を煽る大和のお猪口に茉由は日本酒を注いだ。

大和「ありがとう」

茉由「いえ」

食事中は益田と杏菜が主に話していたからとても静かだ。

何か話した方がいいのかもしれないと茉由は思ったけれど、黙ったままでも気まずくなかった。

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