不妊の未来
茉由「もっと早く出会えていたら」
思わず呟いた言葉に茉由はハッとして口元を手で覆った。
それを見聞きした大和は驚いたように目を少しだけ見開き、それから茉由の手を取り、優しく包み込んだ。
大和(この機会を逃さない)
それから大和は一度も会ったことも見たこともない茉由の旦那に向けて、胸の内で静かに宣戦布告をする。
大和(しっかり繋ぎ止めていないあなたが悪い。茉由は僕がもらう)
茉由「先生?」
大和の視線が鋭くなったことに気づいた茉由は大和に声をかけた。
大和「二人きりの時は名前で呼んでください」
茉由「それは出来ません」
大和「どうして?今からでも遅くない。僕とやり直しましょう」
大和とやり直す覚悟がつけばどれだけいいだろう。
少し頭の中で考えが過ってしまった茉由。
茉由「酔っているんです」
茉由の頭は正常に働いていない。
理玖を嫌いになったわけでも、裏切るつもりもないのに、大和との未来を一瞬でも想像してしまった自分が嫌だった。
茉由「すみません。私から振った話題ですが、これ以上は」
逃げるように視線を下げると、大和は茉由の手を離し、告げた。
大和「今後も僕からご主人のことを聞くことはしません。でもあなたが幸せそうでないと見えたら遠慮はしませんよ。僕はあなたの笑顔が好きだから。あなたが笑顔に、そして幸せになれるようにしてあげたい。その気持ちだけは忘れないでいてください。僕は必ずあなたに寄り添う」
茉由にとっての幸せを考えてくれるという大和の言葉に茉由の心は大きく揺れる。