妖怪ホテルと加齢臭問題(天音と久遠)
天音は、説明を続けた。
「申し訳ありませんが、
露天風呂は、元栓を絞めているので、使用できません」

「そっかぁ・・残念!!」
久遠は外国人らしく、
肩をすくめた、大きなジェスチャーをした。

「それでは、お部屋にご案内いたします」
そう言うと、自転車のかごから、
レジ袋と日本酒のびんを取り出した。

「食事は、酒もつけてくれるの?」
久遠は、目が早い。

「よろしければ、こちらの日本酒をおつけします。
地酒で、名水100選にも選ばれた、湧き水を使っていますので」

天音は、母の口調をまねした。

美しい和服姿の女将だった母
今の母は認知症だ。

天音の悩みはまだあった。

祖母と母の和服・・・
商売柄、ものすごく枚数がある。

どう処分するか・・・
高級品もあるはずだが。

古い木造建築なので、
歩くたびに、廊下の板がギシギシと音を立てる。

久遠は、きょろきょろして、
物珍し気に、好奇心いっぱいの
子どものようだ。
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