妖怪ホテルと加齢臭問題(天音と久遠)
数ポーズ取らされて、
「とても美しいよ。
見てごらん」

久遠は、画像をスマホで見せてくれた。

ほぇーーー
緑のもみじ、黒の着物、

裾柄の赤もみじ、手と足の白さが、なまめかしい。

自分ではないみたいに、美しく
妖艶だ。

「帯を畳に流して・・・
そういうのもいいですよね」

天音は、照れ隠しをするように、
急いで数本の帯を、畳の上に広げて見せた。

畳の上に、錦の川が何本も流れる。

天音は、窓のそばのもみじの枝を折り、帯地の、川の上に置いた。

「それもいいね。とてもクールだ」

久遠は熱心に、写真を撮っている。

天音は、ぼんやりとその姿を見ていた。

この人なら、
この旅館の立て直しが、できるのだろう。

この人と一緒にできれば・・
ふと、よぎったが、すぐに現実に戻った。

「東欧の・・・
小さな村に行った時だけど」

唐突に、久遠が顔をあげて、
天音を見た。
< 37 / 59 >

この作品をシェア

pagetop