叶わぬ恋だと分かっていても
***

『親に……バレた? 原因は?』


 私にとっては一大事の告白だったのに、なおちゃんはいたって冷静で、原因は何だったのか?と模索してくるの。
 それが、自分と彼との心の温度差を表しているみたいに思えて、私はひとり物凄く悲しくなった。

「お土産の中に……なおちゃんの名前が入ったホテルの領収証が入ってた」

 何故そんなヤバイものが、よりによって私の実家への手荷物の中に入り込んでいたのかは分からない。


 なおちゃんは少し思案するように『何でそんなものが菜乃香(なのか)の荷物に……?』ってつぶやいたけれど、そんなの、私のほうが聞きたい。それに、「何故?」はきっとなおちゃんより沢山沢山考えた。

 けれど、実際それ《《こそ》》が真実で、変えようのない事実だって気付いたから。

「今更何で?なんて考えても仕方ないし、正直それはもうどうでもいいの」

 私はなおちゃんの思案を断ち切るようにそう言うと、小さく吐息を落として黙り込んだ。


 そんな過ぎ去ってしまったことより、私はなおちゃんに、ふたりのこれからについてちゃんと告げないといけない。

 考えるなら、今から私が発する言葉の内容について、吟味して欲しい。
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