私のヒーロー。
 オレンジジュースと数種類の安いスナック菓子にふかふかのクッション。お気に入りのルームウェア。
 仮にも女子高生が深夜にお菓子パーティーなんて健康によくないと思うけど、失恋したばかりの親友の太田友理奈は「こうでもしなきゃ気が済まない」と言ってそれをやめなかった。
 それに未那だってたまには羽目を外してもいいんじゃないか、と思っていた。毎日こういうことをしてたらちょっと問題だけどたまになら良いんじゃないかなと思う。
 多分、同じクラスの千葉さん達はこう言うことをするのは肌に悪いとか太るとか言って嫌がりそうだけど。


 友理奈が塩のポップコーンに手を伸ばす。
 近所のスーパーのプライベートブランドのそのポップコーンは値段こそ安いけど味は確かですごく美味しい。テーマパークや映画館に行くと必ずポップコーンを買う友理奈のお気に入りのお菓子の1つだった。
「これで私を振った男は5人目」
 そう口にしてまたポップコーンを頬張った友理奈に未那はオレンジジュースを片手に訊ねた。
「今回は何が原因だったの?」
「他に好きな子ができたんだって」
 友理奈は不機嫌そうにそう言って今度はコンソメ味のポテトチップスに手を伸ばした。
「じゃあ、先輩はその好きな子と付き合ってるの?」
「うん。しかも、相手誰だと思う?」
「誰なの?」
 未那が首を傾げるとコーラの大きいペットボトルを片手に持った友理奈がゆっくりと言った。
「TA」
「千葉さん?」
「大正解。千葉愛海。でさ、彼氏にあいつのどこが好きなのか聞いたら胸があるところとか言うんだよ?何それって感じでしょ?」
 友理奈は早口でそう言うと、コーラをペットボトルのまま飲んだ。これは、相当イライラしてるなと思った。
 ただ、美術部とダンス部を掛け持ちしている友理奈は普段運動していることもあってかいくら食べてもあんまり太ってるようには見えなかった。本人は体重が増えた、増えたと騒いでいるけど全然そんなことはないと未那は密かに思っていた。

 未那が友理奈の口から次々と出てくる彼女の元彼となった他校のダンス部の先輩の話に適当に相槌うった。
 本当は、せっかくのお泊まり会だしもっと楽しい話がしたかったけど今の友理奈にはその選択肢がないことは分かっていた。友理奈は昔からイライラすると自分が納得いくまで話すタイプなことは分かっていた。
 そして、自分がそんな彼女に決してNOとは言えないこともよく分かっていた。
 理由は単純だ。嫌われたくないから。
 嫌われたくないから聞きたくない話も聞くし、興味のない彼女の元彼の話も聞く。ちゃんと会話に対する質問をして1人の人間として会話のキャッチボールをする。
 そう、全ては嫌われないようにするため。
 自分がNOと言わなかったらトラブルなく人間関係を築くことができる。
 それが16年間生きてきた未那のだした答えだった。
< 1 / 6 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop