離縁するはずが、冷徹御曹司は娶り落とした政略妻を甘く愛でる
 通った鼻筋に、綺麗な二重の目元、引き結ばれた薄めの唇。
 近寄りがたく感じてしまうほどすべてが整った綺麗な顔立ち。

 忍さんの端正な顔を正面から見て、かっこよさに頬が熱くなる。
 こんなことで動揺してしまう自分が恥ずかしくて、思わず視線を落とした。

 うつむくと肩の上で切りそろえたばかりの髪が視界を覆ってくれた。
 そのおかげで、少しずつ気持ちが落ち着いてきた。

 ふぅっと息を吐き出してから顔を上げる。

「あ、あの。これから……」

 これから夫婦として、ふたりで幸せになりましょうね。

            
 そう続けようとした私の前で、忍さんが静かな口調で言った。

「そうやって緊張しなくていい。俺は必要なとき以外はこの家には帰らないから、君はここで自由に過ごしてくれ」

「え……?」

 忍さんはここで暮らさないの?
 せっかくこんな素敵な新居を用意してくれたのに?

 驚きで目を見開く私とは対照的に、彼は淡々と続ける。

「もちろんここに友人を呼んでもいいし、周囲にバレないように気をつけてくれるなら恋人を作ってもかまわない」

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