不倫彼氏とデートした夜、交通事故に遭ったら、出逢う前に戻っていました。
「玲奈、離婚はできない」

ベットの中、マッキーが切長の目を寂しそうに細め、隣にいる私ではなく、ホテルの高層階の、大きな窓から差し込む月の光に向かって、残酷な言葉を放った。

「一昨日、クリニックに行ったそうだ。妊娠3ヶ月と言っていた」

『言っていた』のは私の3つ下の妹──紗智。
女は結婚すると変わるんだね。
前はどんなことでも、姉の私に真っ先に話してくれたのに。

7年前、大学を3年で休学し、語学留学をしていた私に、高三の紗智が『家庭教師がきたよ〜』と写真付きでLINEをくれた。

ボサボサ頭に黒縁メガネ。グレイのパーカーを着た冴えない男。取り柄は私立の雄、K大生ということだけ。

それがマッキー──大和真咲──だった。

志望大の学生になった紗智が『ねぇねぇ、お姉ちゃん、びっくりすることがあったよ。帰りにカフェ寄ったら、大和先生に逢ったよ』と、帰宅するなり私に言ったのが、3年前。

『コンサルティング会社にいるんだって。先生から声かけられた時、誰だか分かんなかった。すっごいイケメンになってたんだもん』

それから暫くして『真咲先生と付き合うことになったよ。もう、信じられないっ』と言って、スマホの写真を見せてくれた。

家庭教師だった大学4年の時とは別人の、クールフェイス。スタイリッシュなスーツ姿のイケメンがいた。

私が思い描くスパダリそのものだった。

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