婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

怜士から提案された“恋人ごっこ”を受け入れようと決めて以来、一緒に過ごす時間が格段に増えた。

自分と恋愛が出来そうか試してみてほしいと下手に出たような怜士の言葉だけど、なんだかんだ私の方が振り回されている気がする。

互いに勘違いしてすれ違っていた頃から一足飛びに恋人の距離感へ変化したことに、いまだに戸惑いを隠せない。

怜士の態度が違いすぎるのだ。

絶交状態だった高校生の頃だけでなく、一緒にいた子供の頃の彼とも違う。

時折私に向ける砂糖を煮詰めたような甘い視線、好きになってほしいと懇願するような眼差しに、どう振る舞ったらいいかわからなくなってしまう。

とにかく私を好きだという気持ちを全面に見せて接してくる怜士。

夕食はともかく、早番だと六時には家を出る私に合わせるのは大変だから朝ごはんは別にしようと言っても、『少しでも陽菜との時間を取りたい』と眠そうな目を擦りながら起きてくる。

濃いめのコーヒーを飲み、あくびを噛み殺しながら食事をする怜士を見て、胸の奥がキュンと鳴った。

体調を崩さないか心配になるけど、私のために必死になってくれているのだと思うと嬉しくて、栄養バランスのいい食事を食べさせてあげたいと料理にも精が出る。

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