婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

今までベッドで過ごしていた時間の代わりに、毎回こんな風に色気ダダ漏れで甘い言葉を囁かれたらたまらない。

ドキドキしすぎて心臓が痛いし、なにより赤ちゃんに聞かせていいセリフじゃない。

「……胎教に悪そう」
「逆だろ。両親の仲がいいのが一番って言うしな」

腕を引いて胸の中に抱き込みながら、彼は楽しそうに私の頭を人差し指でぐりぐりと弄る。

「……なにしてるの」
「いや、陽菜はつむじも可愛いなと思って」
「ふふ、なにそれ。さすがにそんなので照れたりしないから」

そのまま身体を寄せて怜士の体温を感じると、ドキドキしながらもホッとするような、くすぐったい感覚が身体中を包み込む。

両腕を彼の背中に回し、ぎゅっと抱きついてみると、互いの鼓動が重なり合い、心地いいリズムを刻んでいた。

言葉にしなくても、お互いに同じことを考えている気がする。

確かめてみたくて、私は腕の中から上目遣いに彼を見た。

「ねぇ」
「ん?」
「今、なに考えてる?」
「そうだな。幸せってこういうことを言うんだって考えてた」

思っていた通りの言葉が返ってきて、より幸せだと実感できた私は、ニヤけそうになる頬にぎゅっと力を入れる。

そして私も同じことを考えていたという意味を込めて、そっと怜士の頬にキスを贈った。



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