婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

怜士の家に住み始めて、三週間が経った。

セミの鳴き始めた七月中旬、今日は彩佳先輩に紹介された男性と会う約束の日だ。

正直まったく乗り気ではなく、何度も断りを入れようかと、この一週間迷いに迷った。

先輩の勤める化粧品会社の同期で、大内衛(おおうち まもる)という彼は、私よりひとつ年上の二十六歳。

化粧品会社といえば、彩佳先輩みたいに綺麗な女性が多い職場なイメージだけど、研究職には意外に男性もいるのだとか。

華やかな女性を見慣れているだろうし、私なんかと会ったところで彼にメリットがあるとは思えないのだけど。

私は先週の彩佳先輩の言葉を思い出した。

『大内くん、すごく真面目で穏やかな人よ。仕事一筋でしばらく彼女がいないってぼやいてたし、一度会ってみるのもいいと思うの』

怜士に対し、結婚する前に恋愛してみせると啖呵を切ったものの、積極的に相手を探す気になれないでいる私に、先輩は強引ともとれる雰囲気で大内さんと会うよう説得してきた。

『会ってみて気が合いそうならそのままお付き合いしてみればいいし、合わなければお断りすればいいんだもの。ね?』

可愛らしく小首を傾げられたものの、なぜそんなに私の恋を応援してくれようとしているのかわからない。

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