婚約解消するはずが、宿敵御曹司はウブな許嫁を愛で尽くす~甘くほどける政略結婚~

とんでもない勘違いに気付いたのは、先週の土曜日。陽菜がデートだと出掛けた日の午後だった。

自宅マンションに彼女を連れてきて三週間。あいつは部屋に鍵を付けてまで拒絶を示し、ことごとく俺を避け続けた。

ホテルでの一件を考えれば、それも当然だと思える。

組み敷いた身体はガタガタと恐怖に震え、堪えてはいたものの瞳は涙に濡れていた。

父親から聞いた彼女の言葉を鵜呑みにした俺は、まさか陽菜が処女だとは思ってもみなかった。

経験があるなら無理やり押し倒していいというわけではないが、勘当されようと結婚しないと両親に啖呵を切った陽菜を見て、焦った末の失策だった。

考えてみれば、学生の頃から彼女のことに関しては間違いだらけだ。

オーダーしたマッカランのグラスを傾けながら、己の愚行にため息を洩らす。

陽菜を意識しだしたのはいつからだったのか、正確には思い出せない。

小学生の頃からずっと一緒にいて、隣にいるのが当たり前の存在だった。

麻生グループは創業三十年余りと歴史は浅いが、教育関連事業として国内のシェアを一手に担う巨大企業に成長した。

< 97 / 262 >

この作品をシェア

pagetop