きみに ひとめぼれなおし
ほっとした気持ちが、目元をじわっと濡らし始めた時だった。
「あのさあ、行ってほしいところがあるんだけど、いい?」
後ろからあいつがぼそりとそう言った。
「……いいけど」
僕はあいつに言われるまま自転車を走らせた。
もうずいぶん遅い時間だからか、他の車や自転車とすれ違うことはなかった。
それなのにあいつは「少しだけ急いでもらっていい?」と僕をせかした。
「ここ」
あいつが短くそう言ったところで自転車を止めた。
キキーっと自転車のブレーキ音が、静かな住宅街に響き渡った。
目の前にたたずむ家の表札を目にして、僕はドキリとなった。
そこは、坂井さんの家だった。
僕とあいつの共通の知り合いの「坂井さん」と言ったら、もうあの「坂井さん」しかいないだろう。
初めて来た、坂井さんの家。
思わずその外観をじっくりと見てしまった。
二階の端の部屋にだけ、ほんのりと明かりがともっている。
もしかして、あそこが坂井さんの部屋なのだろうか。
ごくりとつばを飲み込むと、自転車の後ろが急に軽くなった。
「あのさあ、行ってほしいところがあるんだけど、いい?」
後ろからあいつがぼそりとそう言った。
「……いいけど」
僕はあいつに言われるまま自転車を走らせた。
もうずいぶん遅い時間だからか、他の車や自転車とすれ違うことはなかった。
それなのにあいつは「少しだけ急いでもらっていい?」と僕をせかした。
「ここ」
あいつが短くそう言ったところで自転車を止めた。
キキーっと自転車のブレーキ音が、静かな住宅街に響き渡った。
目の前にたたずむ家の表札を目にして、僕はドキリとなった。
そこは、坂井さんの家だった。
僕とあいつの共通の知り合いの「坂井さん」と言ったら、もうあの「坂井さん」しかいないだろう。
初めて来た、坂井さんの家。
思わずその外観をじっくりと見てしまった。
二階の端の部屋にだけ、ほんのりと明かりがともっている。
もしかして、あそこが坂井さんの部屋なのだろうか。
ごくりとつばを飲み込むと、自転車の後ろが急に軽くなった。