ダメな私は失声症の君と同居する




「はぁ……。」
またか,と私──来栖 澪(くるす れい)は思う。
目隠しされて連れてこられたのは見ず知らずの街。
ついに養親に捨てられたようだった。
私が捨てられたのはこれで2回目。
実の親に捨てられたのが初めてだった。
まぁ,捨てられるのも仕方ない。
勉強平凡,運動平凡,スタイル平凡,私にあるのは明るさだけだ。
人々が忙しなく行き交うのを眺め,私はひとつため息をついた。
財布には樋口一葉が1人と,北里柴三郎が2人。
こんなんじゃ私の寿命分は生きられない。
どうしようかと真っ暗な人生に目を向けたとき。
< 2 / 5 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop