もう遠慮なんかしない

その後、兄や両親にことの顛末を話に行くときにも相澤さんが付いてきてくれた。

颯さんとの同居生活について、初めは渋っていた両親を颯さんが誠意をこめ説得してくれた。

どうやら、兄も『今度の人は絶対に凛花を裏切ったりしないよ』なんて、後押ししてくれていたらしい。

そんなこんなで二人の同居生活が始まった。

相澤さんのマンションは一人暮らしには贅沢なくらい広い間取りで驚いた。

「とりあえず荷物も置けたし、これから少しずつここでの暮らしに慣れていこう」

と口にした時、仕事をしていた颯さんが私の側にやって来た。

「どう?片付けの方は、終わった?」

「はい。大体は…」

「俺もちょうどキリがよくて、手伝いでもしようかと思ったんだけど、それなら、お茶でも飲もうよ」

「はい。じゃあ、私がお茶入れますよ」

キッチンに立ち、「緑茶にします?紅茶?それとも…」と言いかけていると、颯さんが後ろからふわりと私を包んできた。

「やっと凛花を俺のところに連れてこられた」

優しい抱擁にうっとりしてしまう。

振り返ると曇りのない瞳が私を映していて、額にチュッと軽いキスをされた。

「颯さん…前に私が初恋、みたいなこと言われていましたけど、私も…私も颯さんが初恋の人です。同じ空間に居られるって考えたら、そういえば私もだったな…って思い出しました」

私も「ずっと前から好きだった」…そう伝えたかったはずなのに、伝える前に唇を塞がれた。

私たちはそのまま寝室に行き、初めてお互いの思いを伝えあった。


毎日とても甘やかされていて、颯さんが隣にいることが自然と感じられるようになった頃、私たちは婚姻届を提出した。

「はぁ…無事に受理されて安心した。遠回りしたけど、待ってて良かったよ」

私は思わず「うふふ」と笑ってしまった。

これからも二人でずっと…幸せを噛みしめて「愛してる」と伝えていこうと誓いあった。

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