【短編】地味男が同居したら溺甘オオカミになりました。
 初めての感触にビクッと驚いたけれど、その驚きをほぐすように唯人くんが私の髪を撫でてくれる。

 優しく甘い仕草に、私の緊張も解けていって……。

「んっ……ふぁ……」

 唇の裏や、歯列をなぞる唯人くんの舌に思わず声が漏れてしまった。


「……伊千佳……かわいすぎっ」

 余裕のない唯人くんの声。

 いつの間にか呼び捨てになっていた私の名前。

 唯人くんのぜんぶにドキドキして、好きだなぁって思いが溢れて胸がキュウッと締まる。


「唯人くっ……んっ……すき……」

「俺も……伊千佳……」


 外の雨音だけが響く夜に、恋人同士となった私たちは初めての深いキスを交わし合った。
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