『ペットフード』
「雨哥が…助けてくれたから…」
雨哥の記憶にもあの日、苺美を連れ出した日が浮上する。
「雨哥がお母さんと私を離したから…私…」
お母さんに殴られても良かったよ。
一緒に居れるなら。
連れ出して会えなくなるって分かってたら「助けて」なんて言わなかった。
雨哥の事、想っちゃいけないなら「助けて」なんて言わなきゃ良かった…。
助けてって言った私が悪いのか…。
苺美の中で1つ答えが増えた。
「お母さんに会えなくなったから」と言い出した苺美の言葉を「私が悪いって言いたいの!」と雨哥が激しく掻き消した。
「違うよ。違うけど、雨哥に」
「あの日、苺美を助けなきゃって思って助けたのに!何で私にこんな事」
「雨哥の事、想っちゃ駄目なら助けてくれなくて良かったよ!お母さんに会えないのに!」
2人の声で空気が変わった。
静かに重くなった。
「なに…それ…私のせいなの?」と雨哥の声が沈む。
「そうじゃないよ。もうお母さんに会えないのは変わらないし…もういいの。今は、これからは雨哥がいてくれれば良いの」と雨哥に気持ちをぶつける苺美になる。
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