『ペットフード』
「あの…」から始まった。
「それで?」「ふーん」「それで?」「そいつは?」「そう」「どうしたい?」
雨哥の言葉にタキが時折、言葉をくれた。
「どうしたい?」
「琉羽は消さないで下さい!」
雨哥はタキに、タキの前で床に手をつき、頭を下に床に下げた。
『お願い!』
タキの深い呼吸。怖い。
その後、息を吸った後、吐かれる言葉は…?
「その、ルウって奴はどうしたいって?」
タキの言葉。
分らない。ただ、自分の事を話してと言われ、今、こうして…。
「分らないです」
正直に答えた。
「あっそ。じゃあ」とタキは言い、残りのローズティーを一気に飲み、立ち上がった。
見上げる雨哥に「帰る」と背を向ける。
「あの…どうすれば…」と雨哥がタキの背を追う。
「私に話した事を、そいつに言ってから、そいつ、ルウがどうしたいのかを次に何をするのか聞けば良いんじゃない?」
そっか。
そうするだけか。そうしかないじゃんね。
「あの、琉羽の事…消」
そこまで言うと「今は分らない。そいつが、何の為に私に言ったのか分らないから」とタキは言い、振り返り、雨哥を見た。
見てくれた。
「雨哥」
タキの呼ぶ声。
「はい」と目が合う。一瞬の温かさ。
「強いな」とタキがほんの少し優しかった。潤みそうになる。
「タキさん…」
それ以上を伝えたいけど、声が続かない。
空気を取り入れるだけで精一杯。
「今は、そいつの答えを聞くだけだ。帰る」
タキが【201号室】から出て行った。
タキが出て行ったドアに凭(もた)れ、雨哥は少しの間、泣いた。
泣いた理由は…分らない。
ただ泣いた。
泣きたかった。
泣く事しか出来なかった。
怖い?
不安?
安心?
優しい?
どれも合ってて違う。
だから泣くしかなかった。
強くなる為に泣いた。
ただ、それだけの事。
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