一夜がつなぐ運命の恋   ~店長の子どもを身ごもりました~
「俺、昔すっごいがむしゃらに仕事してたんだ。」
私の頭に手をあてたまま店長は話始めた。

低音の響きは心を落ち着かせる。

「長く続けていくためには、そんながむしゃらなやり方はダメだって。さすがに疲れ切って、思考回路もぐちゃぐちゃになって。がむしゃらに仕事することはいいことじゃないって。ほどほどが一番自分らしく、続けられるって外国に行ってから気づいたんだ。そう、教えてくれる人がいた。」
私の頭にまだ店長は手を置いたまま続ける。

「俺、東北の田舎出身でさ。都会生まれ、都会育ちの同期に負けたくないって必死だったんだ。それが仇になって、失敗もかなりした。」
知らない店長の世界を知れているようで、私は話に聞き入る。
「どこか麻貴は昔の俺に似てる。」
「え?」
店長を見上げると店長はどこまでも優しく微笑んでくれている。
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