勇者の幼馴染という負けポジションの妹の身代わりになったつもりで、つもりだったのに何故か執着溺愛されちゃった私の誤算。

　いわばこの世界の人から見れば、私は未来を既に見ている予言者のようなもので、もう未来は決まっている。

「やっ……フェリクスっ……まってっ……やめてっ」

　なんて、現実逃避して悠長に回想している場合じゃなかった！

　私は今絶賛襲われている。誰に？　妹ジーノを過去の存在へと捨て置き、村には帰らないままに幸せになるはずの小説のヒーローである、勇者フェリクスに！

「嫌だ。なんで俺から逃げた！？」

　フェリクスは、怒っている。

　怒っている理由は、わかっている。私がこの世界の英雄となり聖女と結ばれるはずの彼から、逃げたようになっているせいなんだけど……だからって、なんでモブの私を追って来たの？

　いかにも、怒った顔をした目の前に居る男。

　彼は何年も前に中央神殿からの宣託を受け、村を旅立ち冒険に出た。その別れの時には考えられぬほど、分厚い筋肉を身に纏った男くささに溢れている金髪碧眼の美丈夫になってしまっていた。

　そして、実は私たちは向かい合って大人しく話している訳ではない。良い子にはお見せすることの出来ない、とんでもない体勢になっていた。