アラサーOLは婚約者より身近にいる優しい彼が好き


 冷たい床に全身を打ち付け、私は横たわってしまう。

 体のバランスを崩した拍子に投げ出した書類が、宙を舞って私に降り注いできた。


 視界に広がるオフィスの天井を目にしながら、後頭部に生暖かい感覚が広がってる。

 私は顔を上に向けたまま、視線だけを横に動かして床を見た。



 大量の赤い鮮血……



 慌てて私に駆け寄ってくる同僚たち、静かだったオフィスはパニック状態。

 涙声で話しかけてきたり、体をゆさぶって正気を保つよう言ってくる人もいる。

 私は意識が朦朧(もうろう)としてるので、誰から話しかけられてるのか確認できない。


 急いで救急車の手配をするよう指示してる声は課長かしら?

 仕事もしないで、今までどこで何やってたのよ!

 いつも私に文句を言って嫌がらせしてくるセクハラ野郎なのに、こんな時だけ涙声で慌てて意味不明、なんのつもり?



 薄れていく意識の中でイライラ、ゆっくりと静かに私は目を閉じながら……


 心の中で思っていた……




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