ハートの確率♡その恋は突然やってきた
「もしかしてケンジさん、はじめてだったりするのかな?」

「はじめてじゃないです~。でも綾香ちゃんとするのは初めてなので、緊張しちゃって」

 ケンジさんは胸を触れさせた手を慌てて引っ込めて、なぜだか反対の手でその手を撫でさする。

「もう片方の手も、胸を触りたいんでしょ?」

 私がくすくす笑いながら指摘すると、ケンジさんはさらに顔を真っ赤にして、首を激しく横に無理ながら叫ぶ。

「ああ、もう! 綾香ちゃんってばこれ以上の刺激を、俺に与えないでくださいよ。心の準備が追いつかないですって」

「これ以上の刺激って、まだなにもはじまってないのに。とりあえずバスタオルを外しちゃ」

「まだダメです! もうちょっと待って!!」

 バスタオルを外す仕草をした途端に、慌てふためいた彼は自分の顔を両手で覆い隠してしまった。その姿に心底ゲンナリしてしまう。

(アソコはびんびんでヤる気があるクセに、何を言ってるんだろ。心と躰は裏腹ってことなのかしら)

「ケンジお兄ちゃん、いつまでそうしているつもりなの? 私このままの恰好でいたら、風邪を引いちゃうかもしれない……」

 気を取り直して当たり障りのない言葉を告げてやると、ケンジさんは手の隙間からこっちを見、私の様子を窺った。しっかり目をこちらに向けることに成功したので、両膝を擦り合わせながら寒そうに躰を震わせてみせる。

「ケンジお兄ちゃん、寒いよ……。早くあっためて」

「わわわ、わかった。ますは綾香ちゃんが布団に入って」

「ひとりでお布団に入っても冷たいだけだよ。ケンジお兄ちゃんと一緒に入りたい」

 私は立ち上がり、顔を隠している片手を引っ張り、胸の谷間にぎゅっと挟み込む。柔らかいであろうその感触に、ケンジさんの目尻がだだ下がりした。

「ケンジお兄ちゃん、早く……」

 胸の柔らかさをさらに強調すべく、谷間に腕を挟み込みながら引っ張って、強引に布団の中へと誘う。

「綾香ちゃん、俺は」

 ケンジさんが触れているのは、私の胸の谷間に挟んでる腕のみ――ここで焦って距離をつめると、逃げてしまう恐れがある。やっと布団に腰を下ろしたというのに、未だに狼狽えるケンジさんを促そうと、細かく聞いていた内容から、有り得そうな言葉を口にする。

「ケンジお兄ちゃんが見た男の人。あの人はお兄ちゃんの代わりだったの」

「俺の代わり?」

「そう……。私から年上のケンジお兄ちゃんにアプローチするには、すごくすごく勇気が必要でしょ。どうしても自分からできなかったんだ」

「綾香ちゃん……」

「だから私に告白してきたその男の人を、ケンジお兄ちゃんの身代わりにしちゃった。ごめんね」

「謝らないで、もういいから!」

 気がついたら、ケンジさんの腕の中に躰が包まれていた。素肌から伝わるぬくもりを感じただけで、これから抱かれるんだというテンションが自然と跳ねあがっていく。

「綾香ちゃん、もう身代わりなんて必要ない。これからは俺だけを見て」

 寄せられるケンジさんの顔を見ながら、ゆっくり瞳を閉じた。次の瞬間に触れた唇。触れるだけのキスが、深いものへと変わっていく。

「ンンっ、あぁっ……」

 鼻から抜けるような甘い声をあげると、触れていた唇が外された。

「ケンジさん、もっと……」

「もっと?」

「これからひとつになって、私はケンジさんのものになるんだから、もうお兄ちゃんは卒業だよね?」

 私の両肩に置いてるケンジさんの手が、ほんのわずかに震えた。緊張感を示すそれに、自分がリードしなければと悟る。

「ケンジさんの身代わりにした男の人を消してほしいの。ケンジさんの全部がほしい……」

 ケンジさんの首に両腕をかけてぐいっと引っ張りつつ、私は布団の上に横になった。その衝撃で躰に巻いてるタオルがゆるりと外れ、うまい具合に片方の胸が露になる。目ざとくそれを目にしたケンジさんは、迷うことなく食らいついた。

 口の中で転がされるモノの気持ちよさに身をまかせながら、快楽の海にふたりで溺れていったのだった。
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