視えるだけじゃイヤなんです!




 ふわふわとした気分から急速に目覚めて、あたしはぱちりと目を開けた。

「ここみ……!?」

 おわ!
 あたしは思わずのけぞった。昭くんのドアップ! 

「よかった、大丈夫か!?」
「へ……?」
「いきなり気絶するから、なにかあったかと……」

 あたしは助手席から体を起こした。
 さっきまでのは、夢……?
 うなぎがくるっと回る。ちがうよというようにあたしの指をカプッとかじった。

「……昭くん」
 ううん、ちがう。
 透くんの仏頂面を思い出して、あたしは思わず笑ってしまう。

「透くんは、大丈夫だよ」
「……ほんとか」
「うん」
「ほんとだな!?」
「うん!」

 窓の外で、覚さんが大きく手を振っていた。

「昭! ここみちゃん!」
 息せき切ってかけよった覚さんは、満面の笑みでこう言った。
「透が、目を覚ましたわよ!」
 ほんと……ほんとに!?

「昭くん!」
 あたしは歓声を挙げて、昭くんにぎゅっと抱きついた。

「よかった、よかった、よかったー!!」
「うん、よかった。よかったんだが、おい、ここみ!」

 うん?

「お前、もうちょっとつつしみを持った方がいいと思う」

 あ……。あたし、どさくさに紛れて、うわ、うわぁ……!
 やってしまった。

 顔が熱くなったあたしを見て、覚さんは「夏ねえ」と朗らかに笑った。


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