厄介なイケメン、拾ってしまいました。
 無事お肉をゲットした私は、スーパーからの帰り道をのんびりと歩いていた。
 昨日、彼に声をかけられたコンビニの前を通り過ぎる。

 アレは夢だったんじゃないか、きっと悪夢だなんて想いながら、黙って通り過ぎようとした。

 のに。

「あ、オネーサン」

 その声。
 何で? いるの?

 足を止めてしまって、しまったと思った。

「あ、やっぱりオネーサンだ」

 彼は立ち上がったらしい。
 私の視線にガッツリ入ってきた彼は、今朝見た格好のまま、デカすぎるリュックを背負っていた。
 なんだが、チグハグだ。

「買い物? 荷物持つよ? かーして?」
「いやいや、何でよ!」
「重いものは男が持つの」

 そこじゃねーよ!
 なんで家にくる前提なんだよ!

 と、心のなかでつぶやいたはずなのに。

「ねえ、泊めてよ。今日も添い寝、してあげるから」
「無理です昨日のことなんて忘れました」

 機械のように言葉を吐き捨てた。
 もう、彼とは付き合いたくない。
 というか、付きまとわれたくない。

「昨日できなかったオプション付けてあげるから!」
「オプションって何? 何の押し売り?」
「泊めてくれるなら教えてあげる」
「無理……」

 とつぶやいた瞬間だった。
 右手が、軽くなった。
 しまった、ツメが甘かった。
 ちゃんと握っておくべきだった。

「じゃあ、このお肉は僕がもらうね」

 笑顔で買い物袋を掲げる彼。

 そ、それは!
 私がタイムセールで勝ち取った霜降り和牛100g 250円!

「へえ、脂のってて美味しそう。ってか、やっす」
「返せーーー!」

 ――ひょーい

「泊めてくれるなら返すって、ね」

 彼はそう言うと、空いた私の右手をきゅっと繋いできた。
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