厄介なイケメン、拾ってしまいました。
「ねえ、お風呂。あれ、キミの仕業?」

 風呂を上がった私は、即座に彼に質問した。
 彼はリビングのソファにダランと座って、テレビのリモコン片手にかちゃかちゃとチャンネルを回している。

「ん、驚いた? 気に入ってくれた?」

 そりゃ驚くでしょ。
 風呂の蓋開けた瞬間に香ってきた、ローズの香り。
 蓋を全部開けて気付いた、バラの花びら。

「まあ、いい香りだった」
「良かった。俺からの、お返し」
「お返し?」
「そ。ほら、俺、添い寝屋だから」

 ソファの背面越しに、彼はこちらを向いた。

「今の俺の仕事は、紗奈を安眠させること。ただ添い寝するだけじゃなくて、身も心も癒やされてほしいわけよ。紗奈にはお世話になってるし、さ」
「へえ……」

 そうやって、彼は一体今まで何人の女性の家を渡り歩いてきたのだろう。

「俺さ、事情があって実家帰れんくなっちゃったってのは言ったでしょ。でも、大学辞めたくね―し。
ま、今は休学中だけど。それで始めたのが、添い寝屋」

 でも、大学生なら……

「友達の家は? 蓮くん、大学生でしょ?」
「友達? んなもんいねーよ」

 蓮くんは少し寂しそうな顔をした。
 こういうところは、年相応だ。

「じゃあ、大学の女の子は? 可愛い子いっぱいいるでしょ? 蓮くんなら、モテそうだし……」
「勘違いされんのメーワクだからヤダ。それに、年上のオネーサンのほうが、生活力あるから良い」
「そっか」

 聞いただけ無駄だった。
 年相応、だけど腹黒い。
 一体何が、彼をここまで駆り立てたのか。

 知りたいかも、と思って、また自分に腹を立てた。
 コイツは、絶対関わっちゃいけない、人種だから。
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