厄介なイケメン、拾ってしまいました。
「んーっと、ここ!」

 彼は勝手にラブホに入り、部屋を選ぶボタンを押している。

「ちょ、ちょっと待って!」
「オネーサン、まだぁ?」

 彼は出てきたレシートをカウンターに出して、私から金を要求していた。

 『まだぁ?』じゃ、ねえよ。

 イヤイヤ財布を取り出し、現金を出すと鍵を渡される。それを彼がさっと受け取って、さっさとエレベーターへ向かう。

「指輪! もう泊まる所提供したから、いいでしょ! 返して!!」
「ああ……はい」

 彼はあっけなく指輪を返してくれた。
 そう、これでいいんだ。

 私の左薬指に戻ってきた、指輪。
 永遠の愛を誓った、あの日に交換した、指輪。
 これだけが、私の……。

 彼にくるりと背をむけ、ホテルから出ていこうとした。

「お客様、困りますよ」

 え?

 私を呼び止めたのは、カウンターのおばさん。

「二人一組じゃないと、宿泊許可できんのです」
「……何それ」
「いや、ルールですから。従えんのでしたら、お部屋はキャンセル……」
「いや、大丈夫です。彼女はここに泊まりますから」

 いつの間に隣にいたのか、彼は私の肩をさっと抱き寄せた。

 はぁ?
 もう、意味分かんない。

「ヤ・ク・ソ・ク・ヤ・ブ・ル・ナ」

 彼は私の耳元でそう囁いた。
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