厄介なイケメン、拾ってしまいました。
「イヤイヤ、オネーサン! 普通は女の子がベッドでしょ」
「そのベッドに行けば添い寝とか言いながら牙を向きそうなお兄さんがいるんですけど」
「だから何もしないって!」
「あと、アラフォーのおばさんは女の子ではない」
「え、オネーサン、あらふぉ……」
「35歳になったの、今日……もう昨日か」

 へえ、と彼は私の顔を覗いた。
 失礼じゃない? 歳言った途端にこれだよ。
 まあ、二十歳そこそこの彼には、アラフォーは珍しいのかもしれない。

「全然、きれいじゃん。……あ、あとおめでとう、誕生日」
「取って付けたように言わなくていいよ。あと、アラフォーは別にめでたくない」

 だんだんふてくされてきて、ふいっと顔をそむけた。ソファの、背もたれの方に。

 思ってもないこと言わないでよ。
 私は、アラフォー。
 若さだけで何でも乗り越えられたキミの頃とは違うんだから。

『……綺麗だね』

 旦那に最後にそう言ってもらったのはいつだろう。
 綺麗、だけじゃない。
 可愛い、も。好き、も。愛してる、も。

 若さが羨ましい。
 でも、キミは使い方を間違っている。
 こんなアラフォーのおばさん捕まえて『綺麗』って、バカじゃないの?

 目頭が熱くなって、ぎゅっと目をつぶった。
 本当、何やってるんだろう、私。
 何もかも忘れて、このまま寝ちゃいたい……
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