不倫の女
 私のせいで彼は死んた。
 追い詰められていた彼を更に追い詰めた。
 私も私なりに追い詰められていた。
 
 理由にはならないけれど。
 
 どれだけ言い訳を連ねても後戻りできない。
 
 彼が自殺したという現実はこの先変わることなどない。
 
 命はどうして手放した瞬間に終わってしまうのだろう。
 
 割れて、壊れて、弾けて、消えて、おしまい。
 
 彼には命は一つじゃ足りなかった。
 きっと十個あっても百個あっても、足りなかっただろう。
 
 息ができない。
 目の前が真っ暗になる。
 
 首を吊る苦しみはもっと苦しかったよね。
 
 ごめんなさい。
 ごめんなさい。
 ごめんなさい。
 
 どうして?
 
 どうすれば良かったの?
 
 私は——どうすればいいの?
 
 そこで私は呼吸の仕方を忘れてしまった。
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