あなたには帰る場所がある。だから、愛しているとは言えない。



 彼と出会ったのは、まだ私たちが新人の頃、へき地での任務の際だ。

「アイザックだ。よろしく頼む、ミリー」
 
 陽のような銀朱(バーミリオン)の髪、青金石(ラピスラズリ)の瞳。
 男性らしくきりっとした眉、すっと通った鼻梁に、薄い唇。
 真新しい白い騎士服は清潔に整えられていたのが、とても印象的だった。
 爽やかで明るくて話がうまくて人の輪の中にいるような人だった。
 実際の働きぶりに関しては心配だったけれど……一緒に戦ってみたら一発でわかる。彼は器用で優秀だった。仕事ぶりは完ぺきで、人一倍任務には生真面目にこなす。
 騎士同士、共闘している間に意気投合するのは、あっという間だった。

「ミリー、お前以上に俺と相性の良い女はいないな」

「え……」

 そんな軽口をたたいてこられると、恥ずかしくてしょうがない。
 だけど、ほんの少しだけ嬉しかった。



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