あなたには帰る場所がある。だから、愛しているとは言えない。




 初めての私を優しく導いてくれて……
 こんなに相性の良い相手はいない。
 とても幸せで、破瓜の痛みも忘れて、私の心は浮ついていた。
 
 ちょうど、辺境の砦の修練場を横切ろうとした際、同僚たちが会話をしているところに出くわした。

「アイザック、お前、同僚のミリーとか良いんじゃないか?」

 心臓がドキンと跳ねる。

(アイザックは何て答えるの?)

 まるで騎士の入隊試験の結果発表の時のようにドキドキが落ち着かない。

 そうして――アイザックが口を開こうとした時――。

「アイザックはダメだ」

 別の同僚騎士が答えた。

「なんでだよ?」

 思わぬ雲行きに私の心も落ち着かない。

 すると――。

「だって――アイザックは王都で妻が待っているからな……」

 ガラガラと足元が崩れていくような感覚があった。


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