*結ばれない手* ―夏―

[24]理由と悟り

 そして同じ頃。

 団長室でも一人の落ち着いた語り手と、一人の戸惑いを隠せない聞き役が、テーブルを挟んで顔を突き合わせていた。

「モモの入団時を覚えておるかの?」

「? ……はい」

 団長の質問に何とか答える暮。

「モモは本来なら、あの選考テストで不採用となる筈だった。が、凪徒が強く推し──結局パートナーとなるのは凪徒だったからの、奴の強引な決定でモモはブランコ乗りに選ばれた」

「ええ……」

 弱々しく返事をしながら二年と半年前に思いを馳せる。

 あの凪徒の引かない態度は『異性』としてもモモを気に入ったのだと思い込んでいたからこそ、今まで冷やかしをやめずにきた暮だが、モモが『妹』となると話は違ってくる。


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