*結ばれない手* ―夏―
 やがて隼人はそんな杏奈から、同じく鳩が豆鉄砲を食らったようなモモの顔に目を向ける。

「君の母親は椿(つばき)さんといった。これから全てをお話するとしよう。立ち話もなんだから座りたまえ。それと……扉の向こうに、二……三人か? おいでいただいても構わないよ。呼んでおいで」

「は、はいっ」

 モモはハッと我に返り、ついしがみついていた凪徒の身体から、頬を赤らめてパッと離れた。

 隼人の言葉の意を汲んで、慌てて扉に駆けていった。



 ──あ……あたしっ、先輩の『妹』じゃなかった……!!



 三人に背を見せ走るその(おもて)には、隠しきれない喜びが刻まれていた──。


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