金の草鞋を履いてでも…
幸せへの序章
十五夜に、やっと互いの想いを知ってから1ヶ月。

何だか、かなりまわり道をして、ようやく恋が実った気がしたけれど、今になって振り返れば、そうでもなかったと気付く。

再会してから今日まで、特に喧嘩もトラブルもないのだから、むしろ順調と言えるだろう。

今はまだ互いに実家暮らしで、休みも合わないから、デートするにも今までとさほど変わりはないが、互いの気持ちがわからないのと相思相愛では、やはり雰囲気がまるで違う。

今夜は、夜景の穴場と呼ばれている、誰も居ない小高い丘までドライブし、ベンチシートの車で寄り添いながら、ぼんやりと遠くを眺めていた。

森川が、不器用なキスをひとつくれたので、私は5倍返しにする。

彼はしばらく熱っぽい瞳で私を見つめていたかと思うと、

「先輩って…なんかやけにキスが上手いですよね」

「本当?それはよかった」

「誉めてませんよ」

森川は、拗ねているようだ。
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