金の草鞋を履いてでも…
一頻りキスを楽しんだ後、

「あ、そういえば、やっと有給取れるようになったんです」

唐突に森川が言い出す。

「よかったじゃない!」

「有給取れたら、温泉でも行きませんか?」

「いいよ。何処かの日帰り湯?」

「温泉宿です」

あまりにも直球なので、今度は私が面食らう。

「い…いいかもね」

「僕の十年分の想い、覚悟して受け止めてくださいね?」

「…望むところよ」

愛が重いって、こういうことなのかと初めて知る。

でも、森川なら構わない。

森川が聞きたくないと言うから、前の彼のことは口に出さないけれど…前の彼の時とは比較にならない程の想いがあるから。

こんなに誰かを愛せるなんて思わなかった。

もし、タイムマシンに乗って、中学時代の私に教えることが出来たとしても、絶対に信じないだろう。

何が起こるかわからない未来だって、ふたりなら怖くない。

これは決してハッピーエンディングではなく、まだ幸せへの序章だ…。



Fin
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