花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません
4,彼女が気になる ー 蓮side
なにか物音がしてゆっくりと目を開けると、知らない部屋にいた。
広さは二十畳ほど。
ここは……どこだ?
ブラウンの革製のソファにピンクのカーテン、床には大きな猫のぬいぐるみが鎮座している。
状況を把握できないでいる俺の目に藤森花音が映った。
「あ、起こしちゃいました?私、急ぐので詳しい説明は後でお願いします。家出る時、鍵しめてください!」
俺の手を掴んで鍵を握らせる彼女。
かなり急いでいるのか、俺が声をかける前に彼女は出ていった。
俺は岡本蓮、三十歳。
日本最大の製薬会社、一二三の社長だが、そこの研究員でもある。
生まれながらの御曹司ではなく、俺は今は亡くなった養父母に引き取られた養子。
そのことを知るのは親族と養子縁組の手続きをした関係者のみ。
実父は誰だか知らないけど、俺には実母がいた。
六畳のアパートで五歳まで実母と暮らしていたが、ある保育園の遠足の日、いくら待っても実母は俺を迎えに来なかった。
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