花婿候補は完璧主義の理系御曹司!? 〜彼の独占欲には抗えません
フフッと笑う私の額を浩ちゃんは呆れ顔で指で小突いた。
「阿呆。チョコで懐柔されるな。いいか、極力奴には近づくな」
「はいはい。私の心配はいいから患者さんの心配してね」
にっこり微笑んで言ったら、彼も優しい目をして笑った。
「お前が元気そうで安心した。じゃあ、またな」
従妹の勤務先まで乗り込んでくる浩ちゃん。
怒りたいところだが、私が心配で来てくれたわけで……。
最近、そんな従兄かわいく思えてきた。
「うん。仕事頑張れ」
明るく笑って手を振ると、自分の席に戻った。
二週間後には研修を終えた新入社員が部に配属されるからその準備や日常業務で四月の初めはてんてこ舞い。
実験やデスクワークに追われ、午後八時までひとり黙々と仕事をしていた。
パソコンの電源を落としたら、一之瀬さんと岡本さんがやってきた。
「あっ、藤森さん、今帰るとこ?一緒に美味しいもの食べに行かない?」
一之瀬さんに誘われ、なにを食べに行くのか尋ねる。
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